西脇工業高校 × 藤田英樹

CROSS × TALK

聴く、伝える、みんなの想い

VOL. 01

西脇工業高校 × 藤田英樹

(太平金属株式会社 代表取締役)

仕事百科事典の取材がきっかけで、西脇工業高校と太平金属株式会社とのコラボ学習が実現。
今回は、情報繊維科で学ぶ3年生4名、2年生3名と太平金属株式会社・藤田英樹社長による、本音の「しごと」トークが繰り広げられました。

  • 情報繊維科 3年

    池田凌斗

  • 情報繊維科 3年

    長倉歩夢

  • 情報繊維科 3年

    廣畑里奈

  • 情報繊維科 3年

    吉田れな

  • 情報繊維科 2年

    稲垣有紗

  • 情報繊維科 2年

    河上拓海

  • 情報繊維科 2年

    藤本麻菜

  • 太平金属株式会社 代表取締役

    藤田英樹

CROSS × TALK

01

わたしたちは「場所」で就職を決めるわけじゃない

「ズバリ、地元で働きたい?」

  • 長倉

    市外に進学します。地元に戻るかどうかはわかりません。仕事に求めるのは「やりがい」。自分も周りも楽しいと思えたらベストです。

  • 吉田

    自宅から通えればどこでもよかったので。採用人数や仕事の数が多くはないので、たまたま市外に就職することになっただけなんです。

  • 廣畑

    地元に不満はないけど、神戸や大阪に比べると求人数も働ける場所も少ない。就職先はもっと多くの数から選びたいです。

  • 池田

    大阪に進学します。ここは何もない、遊べない。もう少し人生を豊かにできるものがあればいいのに。移動が不便なので、それが仕事のネックになることもあるのかと思います。

  • 河上

    求人が多ければ地元にいてもいいです。都会より職場の数は少ないけれど、僕がめざす介護士の人数は地元の方が少ないので、求めている人が多いかも。

  • 稲垣

    ここでは、進学した人が専門的なことを学んでも、それを生かせる職場がないと思います。

  • 藤本

    私は、自分のまちに貢献できる人になりたいので、地元で働きたいです。

  • 藤田社長

    7人みんなに来てほしい(笑)。社長と同じ方向(目標)を見ながら働ける人が、会社では求められます。そこでいい仲間に出会うことは、お金に代えがたいもの。どこで働くことになっても、そんな出会いをしてほしいですね。限られた職場から選んだ会社でも、楽しみを見つけることで、自分の会社に誇りを持てる人になってほしいと思います。入った会社が自分に合うか合わないかは、自分で確かめるしかないから。そんなみんなにとって、いい会社ってどんな会社ですか?

02

地元への貢献度は?長く働ける会社ですか?

「訊いてみましょう。どんな会社が、いい会社?」

  • 長倉

    働いている人同士や上司とコミュニケーションがしっかり取れて、お互いが楽しいと思えて働けたらいいなと思います。

  • 吉田

    給料や休暇も大切だけど、自分が働く上では、つぶれない会社がいいので、資本金が高いところです。

  • 廣畑

    私が就職するのは、高齢者のところへ派遣に行ったり、地域貢献をしている会社だったので働きたいと思いました。地元で働くからには、地元に貢献できる会社がいいです。それが地元で働く意味の一つなのかなと思います。

  • 池田

    失敗してもガミガミ言うだけじゃなく「育ててやろう」という大きな気持ちの人にいてほしいです。

  • 河上

    したいことができてやりがいがあって、家族を養える給料があればいいです。

  • 稲垣

    長く働きたいので、人間関係がいいところです。

  • 藤本

    育児休暇があるといい。会社と自分がお互いに必要だと思える会社がいいです。

  • 藤田社長

    会社も長く働いてほしいので、それぞれ工夫をしています。例えば弊社なら、売上を上げ利益をみんなに還元すること。楽しいことをしようと思うと、やはり儲けないといけないから。頑張ったら頑張った分だけ、評価されるのが仕事です。そのチャンスは、人生の中で絶対あります。自分のものにできるかできないかは、今からの頑張り次第。ぜひチャンレンジしてほしいです。「働く」とは、はたが楽になること。自分が動いて周囲に喜んでもらうのが仕事。それを「やりがい」と呼ぶんだと思います。

03

仕事に求めたいものは楽しさの先の、やりがい!

「仕事の楽しさ、やりがいって何?」

  • 長倉

    私は一人の先生に出会って、体育教師という自分の夢をつくることができました。自分も誰かのきっかけになれたら、それが楽しさにつながると思っています。

  • 吉田

    仕事を教えてもらう中で、目上の人と仲良くなっていけたら楽しいんじゃないかな。

  • 廣畑

    達成感が味わえること。社員旅行とか、頑張った結果のごほうびがあるといいな。

  • 池田

    知らないことや分からないことを、自分のものにできること。自分の知識にできて新しい発見があると、それが楽しさにつながると思います。

  • 河上

    人と接する中でコミュニケーションを築けるのが一番楽しいと思います。

  • 稲垣

    お客さんとコミュニケーションがとれることです。

  • 藤本

    達成感を味わえることです。ありがとうと感謝してもらえることです。

  • 藤田社長

    人間の成長は、いろんなことを吸収し、経験を生かした先にあるものです。言われたことが最初はできなくても、次に言われたらできている。さらに「こんなこともできます」と、意思をしっかり持って自分からアピールすることが大事です。すると「次はもう少し大きな仕事を任せよう」と思ってもらえて、自分のキャパを大きくすることにつながります。それが仕事の「楽しさ」やりがいになっていくんだね。

03

仕事を知り、会社を知れば多可が何でもできるまちになる!

「太平金属さんのような会社の特色を知るために、どんな情報がほしい?」

  • 吉田

    今のシステムでは、応募前に見学に行った会社の中から応募する会社を選ぶのではなく、求人票が選ぶ基準のすべてになります。気になった会社すべての雰囲気などを見学に行けたらいいのにと思います。

  • 廣畑

    私の場合、会社の話や働く上で社員たちが大切にしていることを、講演会で聴くことができました。みんながどういう想いで働いているのかを知りたいです。

  • 池田

    「抜き打ちテスト」がいい。良く見せようとできないと思うので。

  • 稲垣

    企業見学は気軽に行けないので、仕事の現場を見せてもらえるとわかりやすい。動画の紹介もあるといいと思います。

  • 藤田社長

    日頃からもっと会社のPRが必要ですね(笑)。情報を集めることで、働き方の新しい形が見えたり、こんな仕事が地元にもあったんだという発見につながります。私自身も、多可町内に異業種の企業がこんなにあることを最近知りました。企業同士が横のつながりを持ち、異業種が一緒に取組めるのも田舎の企業の魅力の一つ。何もないからこそ、何でもできる。それも、多可町で働く魅力だと私は信じているんです。

AFTER TALK ~取材を終えて

ライター

内橋 麻衣子

「お疲れ様でした!」
およそ2時間近くの対談が終わり、寺田圭佑先生(情報・繊維科)がねぎらいの声をかけてくれた。その時、ふと先生にも質問をしてみたくなった。

「先生は、どうして教師という職業を選ばれたんですか?」
突然投げかけた問いにもかかわらず、先生は丁寧に答えてくれた。

「中学生の頃から成績が悪く勉強嫌いだった私に、親切丁寧に教えてくれたのが、高校で出会った担任の先生でした。先生のおかげで成績が上がり、悩みの相談にも真剣にのってもらうようになり、気がつけば先生と同じ大学に進むことになって……。まさかそこから、自分が教師になるとは思ってもみませんでした。高校を卒業したら就職しようと思っていたんですが、先生との出会いで人生が変わったんです」

「へぇ~っ!」
生徒たちも初めて聞く話だったのだろう。目を輝かせながら先生を見つめる、みんなの姿が印象的だった。

対談に参加してくれた西脇工業高校の生徒たちの、半数は3年生。自分で進路を決めた経験を話してくれた中で心に残ったのが、大人との「出会い」が決め手のひとつだったことだ。地域や学校という、決して広くはない世間でしか生きていないみんなにとって、知らない世界を歩いてきた大人の存在は、とてつもなく大きなものに違いない。

だからこそ私たち大人は、「若者が都会へ出ていってしまう」と嘆く前に、生徒たちにもっといろんな仕事を見せ、地元のまちで働く喜びや意味を丁寧に伝えていく「出会い」の場をつくらなくてはいけないのだと思う。彼らが「多可町で働く」という未来を積極的に選択できるよう、仕事や多可町が秘めた可能性を育て、示していくのは、私たち大人の責任なのだ。

今回の藤田英樹社長との対談が、これから進路を考えるすべての生徒たちにとって、納得のいく選択への「出会い」になることを祈らずにはいられない。