しごと紹介
1. 食育と観光で「まち」を育てたい
「食育」と聞いて、あなたがイメージするものは何なのだろう。
食育とは「食べ物の知識を身につけ、健康的な食生活を送ることができる人を育てる」こと。まちの駅・たかが目指す食育には、もうひとつ大切な意味がある。食で「まち」を育てることだ。
食を通して、まちが育つとは、いったいどういうことなのだろうか?
まちの駅・たかは、多可町の総合観光物産館として2011年に国道427号線沿いにオープン。
酒蔵をイメージした総檜づくり、白と黒の壁、床は白州土のたたき仕上げで、どこか懐かしい空間が広がる施設である。
また2014年からは、北播磨余暇村公園内施設「chattanaの森(ちゃったなのもり)」と名付けられたレストランと宿泊施設の管理運営も担っている。現在の従業員数は、物産館9名、レストラン部10名。多可町の観光業を背負って立つ企業だ。
セレクトショップとしての「まちの駅・たか」は、地元の朝採り野菜をはじめ、巻きずし、播州百日どり、地域で生産される特産加工品、さらには県下のセレクト商品など、常時120を超えるアイテムが店頭に並ぶ。
さらに「日本酒で乾杯のまち」にふさわしく、酒米・山田錦(酒造好適米・昭和11年多可町で生まれた新品種)発祥の町としての情報発信にも力を入れ、地元多可町産の山田錦で醸された日本酒も販売している。
来店者は平日100名を超え、休日ともなると200名を超える日もあるとか。最近では熟年層の来店者が増え、ここにしかないものや安心・安全なものを求められることが多く、健康への意識が高い人が多いという。
農産物販売については安心・安全が第一。生産者の顔が見えるものを並べるために、生産現場に出向き、栽培履歴も確認するそう。「畑を見ると生産者のこともわかりますから」と駅長は語る。
そんなまちの駅・たかには、もうひとつの顔がある。多可町の観光総合案内所である。来店者の9割が町外から。観光地としての多可町を楽しむためのアドバイスも求められる。まさに人と人が織りなすヒューマンステーションである。
2. スローフードとスローライフが人気の商品
まちの駅・たかが買い物と案内によるスポットなら、体験と食事によって食育をかなえる場所、それが年間およそ11万人の来園者を迎える、北播磨余暇村公園内のレストラン&コテージ「chattanaの森(ちゃったなのもり)」だ。
多可町で採れた無農薬野菜やお米、特産の播州百日どりや町内で作られた食材を使った、安心・安全なメニューが人気。
駅長は「ゆったりとした丁寧な暮らしの提案が、食だけでなくまちのPRにつながっていく」と語る。
3. 生活スタイルを大切にした働き方で、支え合う女性スタッフたち
「女性がいきがいを持てる職場づくりがモットーです。女性の場合、育児・孫の世話・介護など、それぞれの世代やライフスタイルに合わせた働き方が求められます。まちの駅・たかのスタッフは、30代〜70代と世代もいろいろ、住んでいるエリアも様々ですが、これには理由があるんです。
例えば、子どもを抱える世代は、みんなが同じ居住区だと学校行事が重なって休みたい日が集中してしまい、休暇が取りにくくなります。地域も世代も分散することでお互いが助け合え、一人一人が、自分に合った働き方を模索できる職場をつくることができます」と、駅長は話す。
郊外型スーパーが増え、地元に根付いた小売店が減少している昨今、まちの駅・たかの次の目標は「買い物難民」を救うことだ。買い物に外出できない高齢者に向けて、車での出張販売を定期化させたいという思いがある。他にも、市場を毎日開く、年4回のイベント開催を増やすなど具体的な目標も多い。
「多可町のすべてがわかる施設にする」という駅長の思いは、じわりじわりと形になろうとしている。
4. 食でまちを育てる「食育」スポットとして
「ようきちゃったなあ」
明るい声がお客様を迎える店内。多可町の安心・安全な食を求めて、まちの駅・たかへ、chattanaの森へ、今日も遠方から、またご近所からお客様がやってくる。
観光と食を通して人を呼び、多可のまちを伝え育てる「食育」の場。それが、まちの駅・たかなのだ。
経営者紹介
まちの駅・たか 施設長 藤井英延
1. 遊び心から生まれる、本当のおもてなし
60歳の時に、まちの駅・たかとの関わりができたのをきっかけに、運営に携わるようになりました。
お客様に「満足と感動」を与えられることを、いつも考えています。
ショップの隅に、囲炉裏を作ったのもそのひとつです。冬は炭を入れ、夏はメダカを泳がせ、一年を通してお客様にくつろいでいただいております。ちょっとした気配りです。商売には、こんな遊び心がなくてはいけません。
2. モノを売るな、物語を売ろう
商品を“ストーリー”で売るという発想です。
今、多可町のブランド米と呼んでいいほどの人気商品に育ったのが、多可の「穂田瑠米(ほたるまい)」「長寿米」です。無農薬にこだわり、丁寧に丁寧に育て上げられたお米です。稲刈りを終えてから田植えが始まるまでの冬、田んぼに水を張り続ける「冬期堪水」の稲作です。
一般米の3倍ほどの価格ですが、病気で悩む人たちが「このお米じゃないと」「ずっと探し続けていた」と継続的に購入されています。一年間で収穫できる量はごくわずかではありますが、そんな背景を物語にすることによって販売につながり、人気のお米になったと思われます。
chattanaの森では、風・光・星・水・鳥の声・木々の音…を、体験を通して感じていただいています。すべてをストーリー化することで、食と自然を融合させ、まちそのものを商品化させる。それも私たちの使命のひとつだと考えています。
3. 一緒に創ろう、まちの駅・たかの「物語」
そういう意味では、接客も物語になります。
スタッフには、地元言葉で対応していこうと伝えています。chattanaの森の名前の由来にもなっている「ようきちゃったなあ」というおもてなしの言葉。これも多可町ならではの物語です。
私たちと一緒に「まちの駅・たか」の新しい物語を作ってくれる人を探しています。明るく、元気で、素直な方に、ぜひ仲間に加わっていただきたいと願っています。
従業員紹介
まちの駅・たか 商品開発部・部長 山田真理(やまだまり)
私のまちの駅・たかでの仕事は、商品開発です。知人からの情報や、書籍・ネットなどをチェックして、店頭に新しく並べる商品を探しています。
特に心がけていることは「地元のもの」そして「安心・安全であるもの」の2点です。地元のものって、当たり前に存在しているので、なかなかその良さに気付けなかったりします。
そのひとつが、地元・加美区で栽培されている「はせがい紅茶」です。地元だけで販売されていた商品でしたが、神戸の街との交流が生まれるきっかけになったのが、まちの駅・たかでした。
他にも素晴らしい商品をもっともっと発見して、「地元から都会へ」出してあげたい。そのヒントになるのが、店頭での接客です。商品のストーリーをきちんとお伝えすると、手を伸ばしていただけるんです。作り手の思いをお届けできる大切さを、実感できた瞬間でもあります。
これまでは「体にいいもの・安全なもの」は、おいしくないものだと思っていましたが、生産者の方々の「お顔が見える」お付き合いを通して、おいしさと安全はイコールでつながっているんだとわかったんです。しかも、それはすでに身近に存在しているんです。
そんな体に良くておいしい農産物を、chattanaの森のメニュー開発に生かしています。これからの目標は「体感できる店づくり」です。無農薬で育てたお米や野菜の収穫体験を通じ、実際に食べて感じていただくことを実践していこうと思っています。